脳卒中の回復期リハビリテーションについて
もし脳卒中で倒れたら、まずは急性期病院で命を救うために、またこれ以上、病状が進行しないように、内服、点滴、手術で治療を行います。ある程度病状が安定しても、手足が動かない(片麻痺)、言葉がしゃべりにくい(言語障害)、飲み込みができない(嚥下障害)といった症状が残ることがあります。そういった状態では、自宅生活に戻ること、社会復帰することは困難です。そこで損なわれた機能を取り戻すために、専門的な訓練を開始するところが、回復期リハビリテーション病院です。
回復期リハビリテーション病院では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれの専門分野において、機能回復を得るために365日訓練を行います。理学療法士は、いわゆる「動作」の専門家であり、座る、立つなどの基本動作ができるように身体の基本的な機能訓練を行います。一方、作業療法士は「こころ」と「からだ」のリハビリを行う専門家であり、指を動かす、食事をする、入浴をするなど日常生活を送る上で必要な機能訓練を行います。また言語聴覚士は、言葉によるコミュニケーションや嚥下機能に関する専門家で、失語症や難聴、嚥下障害に対する訓練を行います。しかし、これら療法士による訓練時間だけでは不十分であり、訓練時以外は病棟・病室で休憩しているようでは、廃用(長期にわたる安静による身体機能の低下)を招く恐れもあり、効率的なリハビリは提供できません。回復期リハビリ病院は、急性期病院のような「病気を治すために安静が必要」というイメージとは全く異なり、病棟内でも実際の自宅生活により近い環境として訓練する必要があります。そのことを患者・病棟スタッフとも理解することが重要であると考えます。そのため、定期的に医師、療法士、看護師などのコメディカルを交えたカンファレンスを行い、治療期間や予後予測、ゴール設定など情報を共有します。そして、患者家族説明を通じて、ゴールに向けてリハビリを進めていきます。
退院時期が近づくにつれて、退院後に安全な生活をして頂くための準備が必要となります。患者様の持つ能力に合わせた動作指導、介護者(家族)に対する介助指導、退院後生活環境を調整するための家屋調査など行います。また医療相談員を通じてケアマネージャーや施設へ連絡をとり、介護保険サービスの導入など、医療から福祉へ連携していきます。
このように、回復期リハビリ病院では、多職種が協力してチームを作り、「在宅での生活はどうあるべきか?」、「生活の場としての施設はどうあるべきか?」ということを常に念頭に入れて、「社会復帰・社会参加」へサポートしていく典型的なチーム医療を行っております。